■木質建築物の地域での広がり
智原 聖治
福岡県生まれ、香山壽夫建築研究所を経て福岡市に智原聖治アトリエを開設されました。
現在、木造で中規模・大規模建築物を積極的に手掛けられています。
1.最初に紹介するのが、福岡市の町中に建築された5階建て木造賃貸マンションです。構造は RC と木造のハイブリッド工法、壁 CLT パネル工法+床・屋根を在来軸組工法で構成されています。
風車型の平面構成で4面採光を実現しました。行政に地域での木質化の在り方を発信しながら取り組んだ建築です。手がけた5年前にはまだ CLT もそれほど普及してなく、耐火要求により外壁はシンプルな物となっています。共用部・内部の仕上げも CLT 等、積極的に木質化を目指したプロジェクトです。
2.松陰塾【交流館】柱梁床を在来工法で構成し屋根のみを CLT 工法で設計した山口県萩市に建つ塾併用交流施設です。松下村塾を模築した新松下村塾と繋げた平面構成でシンプルなプランとしました。大空間の梁に平行弦トラスを使い、その上に CLT を乗せることで軽快な薄い屋根を実現できました。構造家とコラボすることで今後の新しい木造建築を目指しています。

3.3階建木造オフィスビルです。軸組ラーメン工法(SE 工法)を選択し箱型プランの中に多様な場所を散りばめたスキップフロアーの平面としています。出来るだけ木質を表しにできるよう工夫をしています。ライトコート(光庭)を囲みながら回遊性のある連続した空間です。

4.鉄骨で設計した信用金庫(銀行)の建築です。発注者からの要望でメインの構造は鉄骨で計画しましたが、出来るだけ木質化をめざし、カーテンウォールのバックマリオンを木質化しました。当企業のロゴデザインから着想を得て、バックマリオンの格子組に生かしました。外部からは鉄鋼造の建物に見えますが、中に入るとそのバックマリオンの木格子が見えてきて温かみのある吹き抜け空間を体感できます。勿論、格子がある事で日射の遮蔽も兼ねています。

5.次は在来軸組工法の住宅です。この建築で意識したことは流通材メインに使う事でした、木造のトラスで構成されたキール梁方式を使うことで無柱空間を実現できました。

6.木造 24Mx48M の無柱空間で設計した家具工場です。基本的にバットレス形式で外側に耐震壁を配置した計画です。大スパンのトラスは勾配上部にテーパードがかり細くなっています。明るさもハイサイドからの採光で十分に期待できます。

CLT を使うメリットは工事短縮が期待でる点にあると思います。コストも補助金を使いながら効率的に建築できますし、大空間、スパンが大きい建物は利点があると思います。断熱性能的にも自身の体感的にも寒さに対しては良いと考えます。問題点は遮音性と思っていて床に関してはハイブリットを勧めたいです。
勿論、経年劣化・遮音性の低さなどを考えても木造の環境性は無視できません。小さい部材で大きな建築ができるという事や構造体表しでデザインが美しく見えるなど、木造の可能性はまだまだあると考えます。最近は企業の TOP も環境意識の高さから木質化には興味を見せてくれることは環境にとって良いことだと思います。今では構造だけではなく、仕上げ材として木質を使うことも良いと思うようになってきました。
【2010年に木材利用促進法が出来ましたが、なかなか広まらないのは何が問題だとお考えですか?】
発注者からの依頼があったときに、木造を積極的に提案していくことが大事だと思います。その中で、メリット・デメリットを詳細に説明していくことは重要です。現在の CLT はコストが高いので、コスト的な説明、例えば上屋が軽量の為に地盤の補強が比較的安価にできる事など、トータル的なコストバランスを説明していくことが、今後の木造建築を広めるためには必要だと思います。またそういう提案のできる構造・設備まで含めたチームを持つこともとても重要です。
耐久性について気を付けている事は、建築家が木材に詳しくなる事、適材適所に材種を選ぶこと、そして技術的に進んだ材料や塗装も進んで使っていく事で、⾧い耐久を持つことができると思います。今後 LVL 等にも挑戦していきたい、ハイブリットで計画することで、木質化を無理のない高寿命の建築を進めていきたいと考えます。建築家の皆さんが新しい技術を取り入れていけば、木造建築はまだまだ広がっていくと思います。
