コスト(cost)
費用。特に、商品の生産に必要な費用。生産費。原価。「コストを切り詰める」
[補説]金銭以外に、時間や労力などを含めていうこともある。デジタル大辞泉
材料(物価)高騰
世界的なインフレの中、日本は消費者物価は、世界から見ると、ほとんど変わらなかった。結果、「iPhoen」を購入する際の負担感は、日本人の平均月収の約45%。米国は25%と大きく違う。これまで、グローバル企業は「安いニッポン」を考慮して、日本向けの価格設定をしていたが、ネトフリのように全世界一律コストを導入しだした。(日経新聞6月22日朝刊より)
最近では建築コストも一気に上昇。私達も総事業費のバランスに苦慮している。先だって概算見積などお付き合いしている工務店から、見積の断りがはいった。現在見積提示がリスクが多すぎるというのが理由。(材料や商品の度重なる値上げで見積の担保が取れない)また、フローリングメーカーからは、中国で買付に行っても、相手にしてくれない、なぜなら日本の業者は安いから。
自分たちの設計費を振り返ってみよう。
設計費は料率で提示しているから、建築物価上昇と連動していると錯覚をしていないか。先の日経記事にある。日本人の平均月収2009年は35万2019年は37万 ほとんど変わっていない。よって建築やその設計費に支払われる金額もほとんど変動していないのではないか。建築プロジェクトに使える金額は10年見てもほとんど変化がないという意味。
震災以降だと思うが、じわじわと建材の値上げは進んできたし、人手不足による建設コストもゆっくり上昇してきた。振り返ってみると、限られた予算のなか広さや、性能の出来得る限りのバランスをとりもって、建築をしてきた。
iPhoneの負担感のように、一旦気づくと安いニッポンでいいのだろうかと気になってくる。
コストコントロール
どの現場も変更はつきもので、多くの項目の決済とコストの比較が監理業務の中心的な役割の一つとなる。多い時は100項目も超える。
ここでは、コストすなわち金額について注目されがち。建築は部材が多いから、物事の立ち位置によってその価値が大きく揺らぐ。
多くの項目は、コストと性能に関すること。コストダウンの話が中心になるので、当初のコンセプトが消えてしまうこともしばしば。だから、私たちの事務所では抽象的なテーマを初回に提示します。大きなビジョンを思い出して、コストコントロールができればと思っている。しかし施主もぐらつきます。お金と思いを天秤にかかるときですから、お互いつらい。
ユーザーは知らない
建築家の役割を。ホームページなどで、作品や仕事ぶりを見て依頼を受けても、実際にまっさらな土地から建築ができる過程を想像できる人は少ない。
出来上がったものを手にとって見てみる。もしくはネットで情報をもって受け取る。完成されているものを消費することが普通の時代です。身近で創造的消費とすると、料理。レストランで食事するのは、どんな味わいを楽しませてくれるのか。ワクワクします。もちろん、空間や給仕のサービスなども総合的に楽しむことができる。建築と大きく違うのは、リピートできること。特に住宅の場合、一度きりです。
では建築家の仕事、建築のつくり方はどうやって伝えたらいいのでしょう。
家つくりのユーザーは、ハウスメーカーやおしゃれな工務店もしくは建売メーカーなど、建築家以外の選択肢は多いです。しかし、これらすべてが私達の競合相手でしょうか?
つくり方が違うのですから競合とは言えないのでは。
価値の対象
価値とはどんなものにあるのか。
お金や性能といった単位になるモノの価値は理解しやすい。
価値はどこにある? 価値はモノにはない。人の中にある
値上げと告示98号
先日、国土交通省の「設計業務及び工事監理等業務に係る実態調査」が終了した。一般建築から新築住宅と改修住宅の人工数の調査。
事務所経営をしていると、「原価は幾ら」が気になっていた。こんなことを言うと、経営者としてはダメでしょうが、建築を考える上で時間をケチってはいけないと建築家なら誰もが思っているのでは。そいいた訳だから、給与と建築の創作活動は反比例しやすい。そんな中、転機が訪れた。
3年ほど前からスタッフの環境を考えるきっかけとなる子育て世代が仕事を支えることになる。最初に始めたことは。情報の共有化。これは案外簡単で情報をクラウドへ移行することで、誰もがいつでも確認できる。(今まではプロジェクトファイルを取らないと探せなかった。)いくつかのアプリを使うが、誰もが使っているモノで十分で、コミュニケーションも密度が上がった。次に、フレキシブルなワーキングタイムと時間の見直し。リモートによる働く環境整備によって、通勤時間や子供の都合を中心にして、空いている時間で働く。(主体的な仕事の関わりが基盤になる)この結果、その後パンデミックによるコロナ禍は、リモートによる運営で混乱もなく事務所は機能できた。
告示98号はご存知の通り床面積により工数が算定される。料率と違って、工事費に左右されない。よって設計者の単価が見えてくる。私たちの仕事、作図や模型などどれほどの時間が使われているか、ユーザーに理解いただくことは、それらの価値をお互いが共有することにつながる。
値上げについて。技術者単価を上げることが、一番の値上げだが、今の一般的な設計費から考えるとすぐに受け入れられるとは思えない。そこで、設計変更等についてしっかり精算できる条件を整理して契約時にクライアント共有することを始めた。
基本設計完了時移行に基本設計の業務を変更する場合など、精算しやすくする。
業務内容に沿って細かくその報酬を最初に提示することにしてみた。
価値の共有
お金(コスト)や性能といった数値化しやすい機能的価値は誰もが理解しやすい。これらの価値は「今」が中心で私たちの価値を理解していただくには、未来へ劣化しない、もしくは劣化に耐性がある価値。価値の対象について横断的な提案ができることをユーザーと共有したい。