2021-04-03
NPO法人アースワーカーエナジーが実行する「天使の森100年プロジェクト」は, 生態系の中の一部である人と自然の在り方という原点から、森林の再生・里山の暮らし・地域循環型産業を考え、実現に貢献していくことを目的とし、また未来につながる子ども達に自然と人のあるべき関係を知るきっかけとなるよう、2010年より活動しています。主に小学生に広葉樹の苗木を育ててもらい、生活の中で使用する水の川上の環境を変えることの大切さを学びます。毎年11月には、山を区分けし段階的に育った苗木を植樹しています。(令和3年にて7回目)水源地と海の関係性を意識しながら、現在の環境問題の重要性を学び、体感します。将来現地は「環境学習公園」として展開の構想もあります。
2015年10月にJIAとして初めて「天使の森」を訪れ、以降植樹作業や下準備に参加させていただいたなかで、JIAにお声掛けいただき、学生(NAF: NAGOYA Archi Fes)と共にトイレ製作が始まりました。
JIAが「SDGs建築ガイド日本版」を刊行した頃、2019年9月のJIA東海支部「けんちくかフェス」にて六鹿正治会長と小原淳氏(NPO法人アースワーカーエナジー理事長)を迎え、「天使の森」と「SDGs」について講演会を開催しました。この機会はトイレ製作にあたるキックオフとなり、12月末に 学生を中心に現地を調査し, 自然を学び設置位置を検討しました。2020年2月には第1回目の学習会として「持ち込まない、持ち出さない」 (現地資材の活用と廃棄物の現地処理)を元に、現地の自然(植物、土、石)を利用した資材選択と活用方法及び構築について、更にはトイレの仕組み、便器自体について話し合いました。計画地は山頂に位置し、遠くには三河湾が望め、光、風、緑等の自然を感じる開放的な空間と傾斜地を利用した計画となりました。4月末の完成を目指していた矢先に、コロナ禍の影響で一旦計画を中断しましたが収束の見通しが立たない中、11月にリモートにより第2回目の学習会を再開しました。今回のプロジェクトでは、JIAが取り組むSDGsを理解し、現地体験→学習会(設計)→製作実践(施工)→完成後の学習会(まとめと展望)+総括セミナーと一通の教育実践プログラムとしました。2021年2月末までに全5回の学習会を開催しました。
学生からの提案を基に、現地の資材から建築の大きさと技術、耐久性、作業効率を考慮し、またワークショップを想定して、基礎はなく、先行して各コーナーに3本柱を立てその間に壁丸太を落し込む工法としました。建築の足元は土留め、目隠しとして現地の石を積みます。使用時に安心できるクランクした動線、壁の高さ(設計時1.8M製作時2.2M)や、外部に人がいる場合に安心して使用できる距離(3M)を検討しました。丸太は壁として積木する際に節や太さにより隙間が生じてしまうため末口に合わせて上下をスライス加工しました。便器は使わず石積みにて溝を作り、床面はダニ予防のため敷石とし、屋根はなく、雨が床と溝周りを自然に洗い流します。使用者はまずヒノキの葉を溝に敷き、排泄物の上に再びヒノキの葉を被せます。そして貯水槽の雨水を自ら流します。紙は植物利用も考えています。
いよいよ2月28日学生と現地にて方向の確認、建物位置決め、丁張りを行いました。山頂の広場から離れ、傾斜地に西日が当たる位置としました。3月に入り掘削に取り掛かります。笹の根はしぶとく、石が掘り出され、資材運搬では山頂は遠く、結局重機頼みとなり人力の無力さを痛感することとなりましたが、柱の建方は人力で行いました。
現地製作会では、山道を歩きながら「天使の森」の活動を学びます。製作前に活動取組みと今までのプロセスを理解し製作に入ります。「みんなで考え、みんなでつくる。」を基に2回に渡り開催しました。3月27日の第1回目では建築足元であるアプローチを製作する、現地の「石をさわる。並べてみる。ワークショップ」を行いました。土を掘り、石を組み合わせ、石を割り、参加者は広がって試行錯誤、相談、協力して石を並べていき、それぞれの敷石が繋がっていき、同時に自然と人と人との距離感も近づいて繋がっていくのが微笑ましいかったです。4月3日の第2回目では壁丸太に各自「天使の森に対する願い」を書込み、記念撮影をして、現地で自ら組んでいきました。参加者の記憶に残り、将来も続けてこの企画の重要性とSDGsを考える場となることを願いました。当日は天候 気温にも恵まれて、また参加者の皆様のヤル気にも助けられて、無事目標達成することができました。後日、壁丸太下石積み、内部床の敷石、庭の縁石造りを終えました。細かな工事と植栽、オガクズや土との撹拌による分解等詳細については、今後詰めていきます。
自然と対峙し、ひとつの目標に向かって協力し合い、人との繋がりが広がったこのプロジェクト全体がSDGsだと解釈しております。この「みんなのトイレ」プロジェクトは完了しますが、引き続き「天使の森」の活動に携わっていくことで「持続可能」な活動に繋がればと思います。
※「天使の森」NPO法人アースワーカーエナジーの環境保全・河川流域産業の活性化プロジェクトの活動の場である山林